青年起業家の卒業生

 2000年度にわたしがはじめて担当したゼミに在籍していた卒業生(Tくん)が大学に遊びに来た。Tくんは在学中に就職活動をいっさいせず、大学にも少しゆっくりいて、自分の好きなこと(ウェブサイトの開発など)をやっていて、それが高じてとうとう起業して社長になってしまった人。ホリエモンと同じく「ITベンチャーの青年社長」という肩書きで呼んでもあながち嘘ではないだろう。
 事前に電話で話をしたときに「授業で学生に少し話をしてみたい」ということだったので、異例のことではあるがわたしの授業(ネットワーク社会論)のなかで少し時間をとって話をしてもらった。内容はネットワークの普及とそれにまつわる各種のサービスが展開されているなかで、人びとの生活や仕事がどのように変化しているのかという話と、彼自身の起業体験といまかかわっているビジネスについて。
 はじめは少し緊張していたようで、事前に用意してくれていた話は短時間で区切りがついたのだが、そこから教室の前でわたしとの対話形式で話を進めたら、だんだんエンジンがかかって、いまかかわっている製品の販売促進事業について熱く語ってくれた。
 授業でも話したのだが、なによりも「仕事が楽しそう」だということがリアルによく伝わるところがTくんの話の素晴らしいところだ。大事なのは「有名な企業に入ること」(それを目指すこと自体は大いに構わないが)よりも「やりがいのある・楽しい仕事が続けられること」だと思う。
 大学内の一部の機関(CC)もふくめて、学生さんたちに過度に情報を与えすぎる傾向がある昨今、このような「生の語り」を授業に導入することにも意味はあるだろうとおもう。授業後に受講生のみなさんにメモを書いてもらったんだけれども、総じて「面白く聞けて、考えさせられた」というようなコメントが多かった。
 しかーし、そんなに紙に達者に書けるんだったら、どーして教室で質問してくれないんでしょうか? ねえ。とくに突っ込んだ質問を紙に書いてくれた、あなた。